脱走ワンコ

脱走常習ワンコのブログ

ライブカメラ

翌朝、飼い主さんは、私にシッポをつけたままケージに戻しました。

「おりこうにしてろよ」

今日はスーツ姿なので、飼い主さんはお仕事です。

ドアが閉まりました。

飼い主さんがいない昼間、ケージの中で飼い主さんを想います。ライブカメラがケージを撮していて、私の様子を飼い主さんは時折チェックしてくれているようです。

私は丸くなっていました。ライブカメラから顔が見えないように奥を向いて。飼い主さんがいない一日は退屈でした。カメラにはシッポの生えたワンコの後ろ姿しか映らないはずです。

時々お水を飲んだり、エサ皿のごはんを食べたりはしましたが、時間はゆっくりしか流れません。


ふとここに来る前のことを思い出しました。前の飼い主さんは、こんなにもお世話をする人ではなく、性処理のために飼われていただけでした。やがて飽きて放置されました。

保護施設の人に捕獲されてケージに入れられてからは、日替わりで何人かの人がもの珍し気にケージを覗きこんでいきました。保護施設といっても、暗くて排泄物にまみれた異臭のただよう場所でした。施設の人からは誉められることも撫でられることもありませんでした。私は放置されたことが悲しくて、ただうずくまることしかできませんでした。